建築基準法改正|8つのポイントを詳しく解説
こんにちは!
「住宅設計年間1,400棟以上、累計10,000棟以上の実績」 SCaDの志村です!
2025年4月に改正された建築基準法ですが、改正箇所が多く要点がつかめないと困っている担当者の方も多いのではないでしょうか。
今回は建築基準法改正について8つのポイントに分けて分かりやすく解説したいと思います!
これから家を建てる方にとっても、依頼する設計事務所がどれだけ改正を理解しているかがデザインや住宅ローン減税に大きく影響しますので、是非最後までご覧ください!
【目次】
1. 建築基準法改正の目的
2. POINT1:4号特例の縮小
3. POINT2:構造計算が必要な木造建築物の規模変更
4. POINT3:省エネ基準適合の義務化
5. POINT4:大規模建築物における防火規定変更
6. POINT5:中層建築物以上の別棟部耐火性能基準変更
7. POINT6:既存住宅における高さ制限・建蔽率・容積率の特例
8. POINT7:用途変更に伴う住宅採光規定見直し
9. POINT8:既存不適格建築物における現行基準適用一部免除
10. まとめ
建築基準法改正の目的
建築基準法とは、建物の安全性を確保し、国民の生命、健康、財産を守るために、建築物の敷地、構造、設備、用途などに関する最低限の基準を定めた法律です。
簡単に言うと、建物を建てる際に守らなければならないルールが書かれている法律です。
そんな建築基準法が2025年4月に大幅に改正された主な目的は、建築物分野での省エネ対策の加速です。
日本は2050年のカーボンニュートラル達成に向け、国を挙げて省エネ対策に邁進しています。国内のエネルギー消費の約3割を占める建築分野での省エネ対策の加速は、カーボンニュートラル達成のために重要な意義を持つと考えられ、基準の変更に至りました。
建築分野での木材利用の促進が言及されているのも、省エネ対策に関連します。木材は、空気中の炭素を固定するようにはたらきます。
建築分野で木材利用を拡大できれば、温室効果ガスの一因である炭素を吸収することになり、カーボンニュートラルの達成につながると期待されています。
建築基準法の改正によって、建物の構造や仕様などに関する基準の一部に変化が生じます。施行日以降に建築確認を申請する建築物については、新たな基準に適合させなければなりません。
もし、施行日より前に建築確認を申請している場合、設計内容の変更等は必要ありません。
しかし、基準がどう変わって何をすればいいのか、いまだに理解が難しい、、という話を聞くことがあります。
そこで今回は、建築基準法改正の内容を8つのポイントに分けて徹底解説します!
POINT1:4号特例の縮小
4号特例とは、以下の基準を満たす建物の建築確認審査を簡略化するものです。
- 木造:「2階建て以下」かつ「延べ面積500平方メートル以下」かつ「高さ13mもしくは軒高9m以下」
- 非木造:「平屋」かつ「延べ面積200平方メートル以下」
従来より、上記を満たす建物(=4号建築物)については建築確認審査が簡略化されています。
建築確認とは、建物が建築基準法に適合しているかどうか、着工前に図面等から判断する手続きです。
4号建築物はこれまで、「建築士が設計」「工事監理者(建築士)が、設計図書通りの施工を確認」していれば、構造耐力関係規定等の審査を省略できました。
一般的な戸建住宅の大半は4号建築物に該当するため、申請が少なくて済み、スピーディーに施工できるというメリットがありました。
2025年4月の改正後、4号特例は「新2号建築物」と「新3号建築物」に再編されました。
- 新2号建築物:木造2階建て・延べ面積200m2超
- 新3号建築物:木造平屋建て・延べ面積200m2以下
これまで4号建築物はすべて審査を省略できましたが、今後は基本的に審査が必要になります。
※ 都市区域外に建築する新3号建築物は、引き続き審査省略が可能です。
また、建築確認申請の際、省エネ基準・構造安全性基準適合性を示す図書を提出しなければなりません。
POINT2:構造計算が必要な木造建築物の規模変更
政府は、森林資源の活性化、炭素の固定量増加などを目的に、“中規模以上建築物の木造化・木質化”を進めています。
また、家の断熱性を高めるために、分厚い断熱材を床下や天井裏に入れるケースが増え、階高が高くなる傾向があります。
建築技術の発展や施主ニーズの多様化により、多様な木造建築物が建てられるようになってきました。
ただ、従来の建築基準法では近年のニーズに対応しきれていないことが現状でした。
この状況を踏まえて、今回の改正では、簡易的な構造計算(許容効力度計算)で建築できる建物高さが高く変更されました。
従来の建築基準法は、高さ13m(軒高9m)を超える高層木造建築物に、詳細な構造計算を課しています。
また、一級建築士でなければ設計や工事監督ができない規則もあります。
改正後は、「3階以下かつ、高さ16m以下」までの木造建築物は、簡易な構造計算で建築可能で、二級建築士も設計を手掛けられるようになります。
四号特例は縮小されますが、壁量計算がなくなるわけではありません。
これまで平屋や二階建ては500㎡以下であれば壁量計算で対応できていましたが、改正後は300㎡を超えると構造計算が必要になります。
POINT3:省エネ基準適合の義務化
2025年4月から、施行日以降に着工する建築物すべてに省エネ基準への適合が義務化されます。
これまで届出義務・説明義務に留まっていた建築物も基準適合が必須となるため、施主との合意形成が重要になります。
省エネ基準は、住宅・非住宅ともに適用される「一次エネルギー消費量基準(BEI)」と、住宅のみに適用される「外皮基準」から成ります。
建築物の省エネ性能の計算結果を持って、省エネ適判(省エネ適合性判定)を受けなければならず、施工スケジュールにも影響する大切なポイントです。
また、省エネ基準適合は住宅ローン減税にも大きく関係する内容ですので、施主にとっても重要な内容となっています。
省エネ基準適合については別の記事で説明したいと思いますのでお待ちください!
POINT4:大規模建築物における防火規定変更
従来の基準では、 3,000m2を超える木造の大規模建築物に対して、耐火に関する厳しい規定がありました。
壁や柱を耐火構造とする場合、木造部分を不燃材料で覆わなければなりませんでした。
改正後は、新しい構造方法の導入により、火災時に周囲に大規模な危害が及ばぬ処置をすれば、柱や梁などの構造木材を“表し(あらわし)”にできるように変更されました。
(仕様例:大断面の木材部材の採用、防火区画の強化、延焼を抑制できる構造計画)
この改正点によって、大規模建築物における内装木質化のハードルが下がり、デザインのレパートリーが増えると期待されています。
POINT5:中層建築物以上の別棟部耐火性能基準変更
建築物の火災を防ぐため、従来の建築基準法は階数に応じた耐火構造性能を求めていました。
低層部(階層3以下)についても高層部(階層4以上)と一体的に防火規定を適用し、建築物全体として耐火性能が要求されるため、設計の自由度が低い点が挙げられます。
<従来基準>
- 最上階から階数4以内: 1時間耐火性能
- 最上階から階数5以上14以内: 2時間耐火性能
- 最上階から階数15以上:3時間耐火性能
2025年の改正では、木造による耐火設計ニーズの高い中層建築物に対する耐火性能基準が合理化されます。
例えば、5階建て以上・9階建て以下の建築物の最下層で、90分耐火できれば木造での設計が可能になります。
POINT6:既存住宅における高さ制限・建蔽率・容積率の特例
リフォーム・リノベーション時の屋根(屋上)の断熱化や太陽光発電設備の設置に伴い、新築時よりも建物高さが高くなるケースが増えています。
また、日除けのための庇を設置したことで建蔽率の上限に抵触してしまうケースが増えることも想定されています。
この現状を踏まえて、建築基準法上の規定が省エネ改修の弊害にならないように、「高さ制限・建蔽率・容積率の特例許可制度」が追加されました。
【現行】
- 第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域やその他高度地区において、原則として都市計画法で定められた高さ制限を超えてはいけない
- 都市計画区域内において、原則として定められた建蔽率・容積率を超えてはいけない
【改正後】
- 第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域やその他高度地区において、屋外に面する部分の改修工事によって高さ制限を超える場合、構造上やむを得ない建築物に対して特例許可制度を追加
(改修例:屋根の断熱改修、省エネ設備の屋上設置)
- 都市計画区域内において、屋外に面する部分の改修工事により、建蔽率・容積率の上限を超える場合、構造上やむを得ない建築物に対して特例許可制度を追加
(改修例:外壁の断熱改修や通気層増設、日射遮蔽を目的とした大きな庇設置)
つまり、省エネ改修を目的としたリフォーム・リノベーションの場合、高さ制限・建蔽率・容積率の特例許可が認められるよう柔軟な制度へと改修されました。
POINT7:用途変更に伴う住宅採光規定見直し
コロナ禍において既存建物の用途(業態)変更を希望する事例が増えましたが、建築基準法における採光面積の確保(第28条「居室の採光及び換気」)に伴う改修費用が障壁となり、計画が実行されないケースが多くありました。
そこで、今回の改正では、既存ストック建築物の有効活用を目的として、一定の条件をクリアすれば最低採光面積が緩和される規定が追加されました。
【現行】
採光に有効な部分の面積(=窓面積)は、住居は床面積の1/7以上、学校等では1/5〜1/10以上確保しなくてはいけない
→採光規定の対象外である事務所やホテルから住居などに用途変更する場合は、必要最低採光面積の確保が必須である
【改正後】
住居において、採光に有効な部分の面積は原則として1/7以上必要だが、一定の条件下では1/10以上まで緩和される
(例:開口部からの採光量に匹敵する照明設備の設置)
→ホテルから住居へ用途変更した場合でも、条件をクリアすれば窓追加工事による採光面積確保が不要な可能性がある
POINT8:既存不適格建築物における現行基準適用一部免除
既存ストック住宅の増加や空き家問題が深刻化する中、現行の建築基準法にそぐわない建物、いわゆる「既存不適格建築物」が増えています。
接道義務(建築基準法第43条第1項)の違反や、道路内建築制限(建築基準法第44条第1項)へ不適格な古い建物を省エネ改修や耐震改修したくても、現行法に適合させることが現実的に不可能で、リノベーションを断念せざるを得ない事例が発生しています。
この状況を踏まえて、古い既存住宅などの省エネ化・長寿命化を促す目的で、市街地環境へ大きな影響を与えないと認められる大規模な修繕・模様替えをする場合は、現行基準を適用しない規定が盛り込まれました。
接道義務違反の土地は再建築不可ですが、今回の改正によって、大規模リノベーションによって古い空き家を再利用できる可能性が高まることとなりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
2025年施行予定の改正建築基準法では、既存住宅から大規模建築物まで広範囲における規定が変更されました。
今回の改正における主たる目的は、エネルギー消費の約30%を占める建築分野における“省エネ促進”と、木材需要の約40%を占める建築分野での“木材利用促進”です。
法改正を正しく理解すれば、省エネを実現しつつ木造建築の設計の幅が広がります。
今後新築をご検討の方は、依頼する設計事務所が法改正をどれほど理解しているかも重要な判断ポイントとなりそうですね!
SCaDでは「住宅設計年間1,400棟以上、累計10,000棟以上の実績」のノウハウから、最新の住宅ニーズに沿った妥協のない住まいづくりをご提案します。
ご興味いただけましたらお気軽にご相談くださいませ!
以上、SCaDの志村でした!
著者:
SCaD株式会社
常務取締役・構造設計士
志 村 恭 平
1つ1つの建物を綿密に計画し、住む人が愛着を持ち、安全かつ安心感のある住環境を提供することに取り組んでいます!
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